ウクライナ産業概況1:鉄鋼業

 ウクライナで毎年秋に『TOP-100』という刊行物が出ており、同国の産業別の動向が概観されていて大変便利なのだが、今年度は今のところウクライナに出張する機会がないので、入手できないでいる。しかし、こちらのサイトで情報が小出しにされており、ある程度の中身に触れることは可能である。そこで当ブログでは本日から数回に分けて、このサイトの情報に依拠しながら、ウクライナの主要産業の動向について報告してみたい。まず本日は鉄鋼業を取り上げる。なお、それぞれの産業部門につき、下の表に見るような、主要企業の売上高および利潤の数字が示されている。

 ウクライナ鉄鋼業は、2014~2015年にドンバス地方での戦闘に起因する衝撃を受けた。しかし、2016年に入ってからは徐々に回復に転じている。

 2013年の生産量は、銑鉄2,910万t、粗鋼3,270万tだった。それが、2015年には、銑鉄2,190万t、粗鋼2,290万tに縮小した。その原因は、ドンバスの占領地帯で工場が停止したことである。アルチェウシク冶金コンビナート(ルハンシク州)、エナキエヴェ冶金工場(ドネツィク州)、ドネツィクスターリ(ドネツィク州)が操業を停止した。また、引き続き鉄道輸送に支障が生じているドネツィク州マリウポリ市のアゾフスターリ、イリチ記念工場も、生産が大幅減となっている。ただ、2015年春の和平実現により、鉄鋼業の状況は徐々に安定に向かい、2016年1~10月の生産量は、銑鉄1,400万t(前年同期比16%増)、粗鋼1,450万t(同10%増)だった。

 それでも、ドンバス諸企業の活動が深刻な障害に直面していることに、変わりはない。特に、クリヴィーリフから鉄鉱石を搬入し、完成した製品を域外に出荷することに、障害がある。ウクライナ鉄道が、軍事境界線までの輸送、また軍事境界線を越える輸送を、安定的に実施できていないからだ。これには、やむをえない事情(インフラの破壊など)もあるが、ウクライナ鉄道のトップ交代に2年も要したという人為的な要因もある。2016年4月にポーランド人実業家のヴォイツェフ・バリチュン氏がウクライナ鉄道社長に起用されたことで、事態が好転することが期待されている。


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